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Stareatphenix -一ノ瀬芳葵-

小説を書いたり、読書をしたり、写真を撮ったり、ゲームをしたりします。電子書籍を「ハイブリッドライブラリー」さまより出版させていただいております。Amazonからご購入いただけます。よろしくお願いします。

色めく世界とカラスの話

 スーパー銭湯というものが好きで、そろそろやめようと思っているのだが、一週間に一度は通うようになってしまっている。元々は一人暮らしを始めたとき、風呂掃除が面倒だという理由から土日のどちらかは外に入りに行こうという発想から始まったのだが、案外広々とした浴槽というのは心地が良くてすっかり気に入ってしまった。それからしばらくニートをしていたのだが、その時は経済的余裕から封印しており、そして再び働くようになってまた色々な場所をめぐるようになってしまった。広いお風呂は良いですよ。ただ純粋に広い浴槽があればいいというシンプルなニーズも、そんな状況になってくると様変わりしてくるわけで、行くスーパー銭湯によっては当たり外れというものも出てくるようになった。先々週までは同じ所に三週間連続で通っていたので、そろそろ開拓しようと地元のスーパー銭湯に行ったのだが、これがあまり良くなかった。どこが良くなかったのか具体的に挙げようとするとキリがないのだが、まあ、すでにこだわりはそういうレベルまで来てしまっている。漠然と述べるのならば全体的に古い。ボロいと言った方が適切かもしれない。湯船から床まで年季が入っており、いったいいつ作られた所なのか邪推してしまうほどであった。だが、そういう場所にも面白いところはあって、その古めかしさを誤魔化すために奇抜な風呂が用意されており、泡の出る浴槽に色が一定時間で変化していくライトを照らしていくというものがあった。つまり、照明を当てられた風呂である。泡立っているので色によってはまるで無数のビー玉が水面を転がるように見えて、実に幻想的な気分になれた。でも、二度と行かないだろう。いや、言い過ぎだ。しばらくは足は向かわないだろう。やっぱり三週間連続で入りに行っていた場所が、何だかんだで気に入っていたのだ。

 

 気に入っていたと言えば、すごく重宝しているボールペンがあって、書き心地が私の求める究極の域に達しているものがあるのだけれど、多くのボールペンがそうであるように、値段によってタイプが違う。例えば150円から買えるようなお試し版のようなものから、外装をリッチにした1500円くらいのものまで。書き心地はおそらく変わらないのだろうけれど、ちょっとした軸のバランスとかノックの音だとかそういうこだわりがあるとやっぱり高いものの方が良いのかも……と思ってしまうのがまあ人の心というもので、先日酔っ払った勢いで気に入っているボールペンの外装究極バージョンをポチってしまったのですね。4000円くらい。それが今日届いたんですけど、開けてみて手にとって「ふむ……」と険しい顔になって、さらに文字を書こうとして手を止めて、色々考えてからまた箱に戻してしまいました。バランスが気に入らなかった。やっぱり150円のやつの方が軽いし気軽だし指になじんでいる感じがありました。なじんでいるのは貧乏か? ……ううむ。このボールペンは贈呈用にします。誰かの記念日に送ろう。決めた。

 

 先週は一日だけ会社に遅刻をしてしまって、寝坊でも何でもなく、駅のホームでカラスを間近で観察できる機会があったからだ。ホームをゆっくりと脚力で飛び回っているカラスの姿には「どうしてそうなっているんだろう」というような不思議な魅力が細部に詰まっていて目が離せない。折りたたまれた羽根は、どうして人間の折りたたみ傘のように不格好に畳まれず、かと言ってユニクロの洋服のように店頭で綺麗に整っている訳でもなく、あれほどまでに自然に収まっているのだろう。脚だって木の枝とも違う滑らかさがありそうだし、細さはそこまで変わらないけれど全く違う物質のように見えるのはそれを自分が勝手に「脚」と認識しているだけなのではないかと思ってしまう。もしかしたら、この世界のどこかにはあのカラスの脚と同じような質感の枝があるのかもしれない。あるわけないですよね。遅刻には気をつけます。