Stareatphenix -一ノ瀬芳葵-

小説を書いたり、読書をしたり、写真を撮ったり、ゲームをしたりします。電子書籍を「ハイブリッドライブラリー」さまより出版させていただいております。Amazonからご購入いただけます。よろしくお願いします。

新しくないことを新しく

 年末はとにかく酒を飲む機会が多くて困ってしまう。基本的に私はアルコールを好んで飲むタイプの人間ではないので、コップを空にしておくと不安になってしまう。どうも宴会の席では「コップを空にしておく」=「暇を持てあましている」みたいに捉えられるらしく、やたらと酒を勧められてしまう。なので、ビールを早々に空にしてしまうとすぐに「何か飲みますか」と誰かしらに勧められてしまい、ついついもう一杯……となってしまう。断れば良いのだが、その「何か飲みますか」と促してくる人の笑顔を曇らせたくなくてついついこちらも作り笑いで「それじゃ、ウイスキーでも……」となってしまう。それは善意の犠牲であり、酔っ払ってふらついても自分が悪かったなとなるのだが、そうではなく「何か飲みますか」の代わりに「何飲む?」と聞いてくる人もいるのは辟易とする。こちらは飲むことが前提となっており、断るとかなり気まずい……のでウイスキーを飲んでしまう。そんな時にソフトドリンクでも頼めれば良いのだが、それでは例えばコーラでも頼もうものなら別の人から「何だ、もう飲めないのか」と聞かれてしまう。ここでも正直に「はい、飲めません」と言えば良いのだが、私は嘘をつくのが嫌いだ。だから飲んでしまう。結果、飲み過ぎになってしまい、いつも帰りのラーメン屋で後悔する。

 

 結局私は酒好きではないのかと思えてきたが、そうではない。酒が好きなのではなくて、酒が提供される場が好きなのだ。と言うわけで、大人になったら行きつけのバーくらいは持っていないとなという話になるのだが、そんな考えをいつからか抱いていた。終電が無くなってもやっていて、近所であり、値段も相応、そして何より静かである……そんな店があれば良いなと思っていた。店を出る時に「おやすみ、マスター」と告げて、家に帰ったら本当にそのまま寝られるような、そんな自宅感覚に近い飲み屋が必要だった。ということで、私はとりあえず駅から近い巡に色々なバーに足を踏み入れることにしている。危ないところはもちろんパスだ。この前行った場所はあまりこの私の理想からすると、遠いバーであった。何とお通しがでるのである。小松菜を箸で摘まみながらスプリングバンクの10年を口にしていると、それはそれは、まあ、自宅で飲んでいる気分になる。この日常感。気取らない感じがまた良いのかもしれない。ただ、酒とクリームチーズで1600円も取られた。どういう値段設定になっているのかは知らないが、随分と強気である。この店には二度と足を運ぶことはないだろう。悪い店ではないのだが、ただ私の理想から離れているというだけだ。ワインの種類が豊富な店なので集まっての飲み会には良いかもしれない。私の地元に人が集まる機会はそうそう無いだろうが。

 

 つい先日の飲み会では数人でしゃぶしゃぶを囲んだ。ここではアルコール類は最小限だったのだが、感心したことがあって、それはK君という私より四つ程年下の青年の振る舞いである。彼はとても気の利く性格であり、料理の注文、そしてテーブルに出ている料理の取り分け、料理の食べ方などなど、全員にきめ細かく気配りをしてくれていた。思わずこの店の店員なのだろうかと錯覚した程である。そんなK君のお陰で、私はほとんど何もしなくてもおいしくしゃぶしゃぶをいただけました。これほどまでに出来た青年なのに、何と彼はまだ一人身であり浮いた話が一つもないようだ。不思議な話もあるものである。

 

 不思議と言えば、今年もあと一日二日だというのに、まるでうちの家族にはその自覚がないのである。まあ、新年を迎える自覚とは何かと改めて考えると微妙な話題なのでここでは控えるが、このまま年を越してもきっと彼らは気づかないのではないだろうか。それで休みが終わる頃になって年が明けているのに気がつくという寸法だ。それはそれで去りゆく年への未練を引きずって引きずり倒しているよりかはマシなのかもしれないが、少しは「去りゆく今年」のことを大切にしても良さそうだと思ってしまう。それとも度重なる忘年会で、そういった情念を全て忘れ去ってしまったとでもいうのだろうか……。

 

 私自身、今年は多くのチャンスに恵まれた。にもかかわらず、それを上手く生かせなかった。だが、悪いことばかりではない。転んでばかりの今年だったけれども、確かに収穫はあった。来年はこの手応えを武器にして気を緩めずにやっていきたいものである。とにもかくにも、電子書籍を出版したことが大きな出来事としてあり、それを取り巻く様々な人間模様、経済模様、哲学、心理学……色々と勉強が出来た。こうして改めて胸の中で振り返ると、もう古くさい記憶だと思っていたことについて、実は結構頑張っていたのではないかと新しい見方も出来るようになってきた。こういう出来事に来年もたくさん出会いたいですね。

 

良いお年を。