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Stareatphenix -一ノ瀬芳葵-

小説を書いたり、読書をしたり、写真を撮ったり、ゲームをしたりします。電子書籍を「ハイブリッドライブラリー」さまより出版させていただいております。Amazonからご購入いただけます。よろしくお願いします。

何かを読めば何かを思う 2

 秋の長夜ということで夜が長いそうですが、いくら夜が長くても朝早く起きなければいけない場合は早く寝ますよね……どっちかと言うと朝の方を遅くして欲しいです。

 いや、日が沈む時間が早くなるのでさっさとお家に帰りましょうって意味が強いんですかね。

 実に牧歌的ですね。

 ですが、例えいつもより早めに帰宅してもどうせYoutube見てグダグダしているだけですしねえ。……あ、その時間で本を読めば良いのか。

 

 

『この人の閾』  保坂和志

 私が贔屓にしている作家の芥川賞受賞作。この作者は作品内をクリーンにするような空間描写が得意であり、特に庭に生えている草を街に建っているビルのように細やかに区画に分けて説明する作品もあります。読んでいて舌を巻きました。家にはどれだけの部屋があって、それがどう使われていて……というとにかく空間に細やかな気づかいのある作家です。
 その作家の初期作は、まるで氏の今後の小説を暗示するかのようなものでした。人が人に対して持っている「場」の感覚、どこまでがその人で、どこまでが他人なのか、それは決して「肌の下」がその人であるというような解決法ではありません。空気や関係性までも包括して、その人の領域を描写するのです。
 このお話は、古い知り合いが結婚して人妻になっており、主人公は彼女を訪ねて近況の話をします。そこから古い知り合いの努力して築き上げてきた空間が次々と紹介されるのですが、当人はそれを当たり前のように思っており、主人公も特に抵抗なく受け取ります。
 我々は実は知らず知らずに縄張りを持っているのかもしれません。普段寄るコンビニにも、通勤に使う電車にも。ほら、銭湯でいつも使っている靴箱に先に人が入ってたら「なんだよ今日はヤダなあ」って思いますよね? 思いませんか。

 

この人の閾 (新潮文庫)

この人の閾 (新潮文庫)

 

 

 

 

『世界のすべての七月』 ティム・オブライエン

 あとがきで訳者の村上春樹が「オブライエンは下手くそだなあ」という旨のことを書いていて、そこまで読んできた私はすっころんだ覚えがあります。確かに小説の表現方法として分かりにくいし、状況説明が圧倒的に足りていないので、こちらが頑張って頭を整理しながら読む必要があります。
 舞台はあるアメリカの高校のクラス会。ベトナム戦争を経験したクラスメートと、そうでないクラスメート、結婚していたクラスメートと、そうでないクラスメート……回想とクラス会の会場を次々視点移動して話が進んでいきます。ちょっと読み飛ばすと「何の話?」となるのが鬼門です。一本のストーリーではなく、クラスメート同士の関係性がクラス会でどうなったか、もしくは思い出の中のクラスメートは今どうなっているのかという回想小説です。彩りある人生を送ってきたこと、回想によって鮮やかに見せてくれた後に、その回想のヒーローが古い町の体育館で行われているクラス会に戻される……。
 長いですが、読破すると時の大切さと切なさとに何か行動したくなります。

 

世界のすべての七月 (文春文庫)

世界のすべての七月 (文春文庫)

 

 

 

 

 

 

アドルフに告ぐ』 手塚治虫

 漫画です。言わずと知れたアドルフ・ヒットラー、そしてヒットラー青年隊のアドルフ・カウフマン、神戸に育ったアドルフ・カミルの三人の人生の交わりを、主人公が見ていくという構成になっています。本当に手塚治虫は映画が好きだったんだなという映画的手法がふんだんに使われていて、読む手が止まらなくなりました。無駄なエピソードが全くなく、そして意味なく死んでいく人間もいない……。
 手塚作品としては晩年のものなのですが、私は最高傑作だと思います。何もかもが計算つくされ、そしてキャラクターが辿る人生にどこかオチがある。必ず何か精神的にケリをつけて作品の最後でキャラクターが立っている。最後に主人公は三人のアドルフについて思いを寄せるのですが、その終着点が歴史の巨大な流れの跡であり、そこに佇む姿がモノローグと相まって読み終えた後で拍手を送りたくなりました。

 

 

 

 

 

以上です。
このブログは私が読書をしないと更新されませんので、頑張って本を読みたいと思います。
いつの間にか読者数も10人!
ありがたいです。
まあ、読者が1人でも1000人でもやることは変わりませんが。

それから、次の更新からもしかすると拙作『私たちのバイクの旅と、ささやかながら与えられた救いについて』の宣伝&解説記事がいくつか続くかもしれません。構想は練ってあります。

ではでは。